気胸について(全般的なこと)

Thoracic surgery

気胸について(全般的なこと)

気胸(ききょう)とは、、、自然気胸とどう違うのか?

「気胸だから、若くてやせてる男性と思ったのに、この人は、、、」などという会話は時々耳にします。専門医の中でも、気胸と自然気胸をあまり区別できていないと思われる場面もあります。そのような時、できるだけ気胸と自然気胸の違いを説明しています。

ひとことで言えば、“気胸はいろいろな疾患の集合体”です。

気胸の分類

  1. 自然気胸
  2. 続発性気胸
  3. 外傷性気胸
  4. 医原性気胸
  5. その他

なぜ自然気胸と気胸が同じような混同して使われるのでしょうか?

いくつかの理由があります。まず気胸の中で自然気胸が圧倒的に多いからです。次に、気胸の初期治療は同じで、胸腔ドレナージ(胸に溜まった空気を持続的に抜く治療)を行うかどうかで、上記いずれであっても共通です。

また、自然気胸は、厳密にはあらゆる疾患を除外して初めて診断できるものです。(従って、そのような知識がなければ、ある病気による気胸(続発性気胸や特殊な気胸)と診断できず、自然気胸と診断してしまいます。)

最後に、自然気胸と嚢胞性疾患による続発性気胸の一部では厳密な鑑別が付かない場合や複合する場合があることです。

患者さんによっては、「原因が知りたい!」「原因はいいから早く治りたい」「早くなおる治療を」など希望されることは、異なります。当科では、患者さんの思いや考えを尊重しながら治療します。

しかし、上記疾患を鑑別することは治療方針に大きく関わりますので、問診や診察にご協力をお願いします。(年齢や画像だけで治療方針を決定することはしていません。)

自然気胸について

自然気胸は、特に基礎疾患がない(体に病気のない)方が気胸になった場合

多くは、10代から20代(若くて)、やせ型(扁平な胸郭)の方に多いという特徴があります。従って、体格は身長が高く、性別は男性に多い病気です。

典型的には、患側(気胸になった側)の肺にブラ・ブレブ・嚢胞という病巣があります。健側(気胸になっていない側)の肺にも病巣がみられる場合があります。近親者の方で、気胸の方がおられる場合があります(約10%)。(遺伝性の気胸は気胸の方が多数おられます)

気圧の変動と自然気胸の発生とのあきらかな関連性は証明されていませんが、日常の診療では台風や長雨の後に自然気胸の方を診療することが多い気がします。

(CT写真:右肺に嚢胞と索状癒着あります)

(手術中写真:嚢胞と癒着が確認できます)

このような胸膜と肺につながる癒着が、気胸発症時に器械的刺激で切断された場合、血気胸になると言われています。他にも矢印のような癒着があります。

入院かどうか

本人様の症状とレントゲンの結果(これを重症度といいます)によります。また、学生の方では、試験や学校行事なども考慮します。

レントゲンでの重症度判定は、3段階です。1度なら経過観察、2度・3度は入院加療を原則お勧めします。2度・3度の肺虚脱には、胸腔ドレナージ(持続的な脱気治療)が必要とされています。このため入院が必要になります。

外来治療の方法は?

穿刺脱気やソラシックエッグ🄬による治療も行っていますが、それぞれの治療には、利点・欠点があり、全員の方に外来治療はできません。また、ソラシックエッグを挿入した場合でも、安全のために当日の経過観察入院をお勧めする場合があります。

社会人の場合は仕事の都合も考慮しますが、しっかりと治療し早期に職場復帰できるように考えます。

治療方法は?

初期治療としては、胸腔ドレナージ・穿刺脱気になります。場合によっては、安静目的で入院することもあります。追加治療としては、手術、胸膜癒着があります。

手術かどうか?

手術適応(手術が望ましいとされる状態)は、自然気胸では以下のものがあります。

  1. 胸腔ドレーン挿入後も空気漏れが持続している場合
    1週間程度様子を見るのが一般的と思います。しかし、入院して1週間の間、特に積極的な治療せずに空気漏れが続き、その後手術を受けられた場合、入院期間が長くなることもデメリットかもしれません。原則は1週間だと思いますが、数日に縮めて手術するかどうかを判断することもあります。

  2. 再発気胸
    これは、再発率と関連があります。初期治療での再発率は30‐40%です。しかし、再発時に胸腔ドレナージを行った場合(同側の再再発率)は、50%になります。そのため、再発時には手術を勧めることになります。
    また、以前とは反対の側の気胸(対側再発=異時性両側気胸)に関しても、手術が考慮されます。

  3. 両側気胸
    同時に両側の気胸になる場合があります。この場合、高度の呼吸不全は少ないのですが、入院後に凖緊急手術となります。
    以前と反対側の気胸(異時性両側気胸)も、反対側の治療内容にもよりますが、手術が勧められます。

  4. 血気胸
    緊急手術が行われます。当院で対応できない場合は、他院を紹介します。

  5. 膨張不全
    健康診断などで、偶然指摘され紹介されることが多い受診の仕方です。日常生活には問題がなくても、膨張不全(肺が虚脱したまま)では余病発症の可能性があるため手術を行うことがあります。

  6. 社会的適応
    一般に手術(胸腔鏡手術)の術後再発率は、以前よりも改善して3-8%という報告が最近多いと思います。単純に再発率だけで比較すると最も優れた治療方法と言えます。しかしながら、初期治療の再発率は30‐40%ですから、70‐60%の方は再発しないという事になります。

    気胸の方をすべて手術するのは過剰医療です。ですから、自然気胸ですぐに手術を勧められた場合は、患者さんの都合や気持ちを考えていない治療だと思います。

    当科の外来・入院診療では、さらにこれまでの診療データをお示ししながら、手術受けるメリットや受けないメリットなどをお話しします。

続発性若年性自然気胸

肺に基礎疾患(なんらかの病気)がある方で、その病気で気胸を起こす場合です。治療方針は、それぞれの原疾患や全身状態により決定されます。

  • 悪性疾患(肺癌、転移性肺腫瘍など)
  • 肺気腫、間質性肺炎、塵肺など
  • 胸腔内異所性子宮内膜症性気胸(いわゆる月経随伴性気胸)
  • リンパ脈管筋腫症
  • Birt-Hogg-Dube症候群など

気胸に関する専門的な学会の一つに“気胸・肺囊胞性疾患学会”があります。その名称通り嚢胞性肺疾患についても熟知すること、これらに対する知識と経験がなければ、治療に難渋する”難治性気胸”になる場合もあります。

これまで、診療以外にも学会等で気胸に関して発表を繰り返してきました。(「気胸に関する報告」に、ここ数年の活動をまとめています。)

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