ドクターズレクチャー

Doctor's Lecture

がんの早期診断と治療法について

【消化器内科:的場医師】

悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患は日本人の3大死因であり、これらを減少させることが我々医師の責務の一つであります。私たち消化器内科では、胃がん、大腸がん、食道がんなどのがん診療に関わらせていただいています。私はこれまで消化器内科診療全般に加え、がんに対する診療を中心に研鑽を積んできました。がんに対する診療・診断機器や外科治療、内視鏡治療、放射線治療の進歩は目覚ましく、化学療法(抗がん剤治療)も毎年有望な新たな薬剤が登場しています。

内視鏡治療について

昨今、検診や人間ドックを受けられる方の増加や、内視鏡検査の普及が進んだこともあり、食道や胃、大腸において早期がんで発見される機会が増えてきています。当院では狭帯域光観察(NBI)・拡大内視鏡観察など搭載している高精度内視鏡スコープを導入しており、がんの早期診断と内視鏡治療を積極的に行っております。

具体的な内視鏡治療法としては、内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection: ESD)や内視鏡的粘膜剥離術(Endoscopic Mucosal Resection: EMR)があり、数多くの治療を当院で行っています。またこれらの内視鏡治療については、クリニカルパスを導入し、短期間での入院が可能となっております。
身体的な負担が少ない内視鏡治療は、患者さんにとって大変有益な治療法ですが、リンパ節転移などがみられない早期がんが治療対象となります。病変の早期発見のためにも、積極的な内視鏡検査が推奨されています。

化学療法(抗がん剤治療)について

進行したがんに対する治療としては、外科での手術や放射線治療のほか、化学療法(抗がん剤治療)が有効な治療となります。当院では安全、かつ高い医療レベルを提供できるように外来化学療法室を開設し、心地よい音楽が流れるリラックスした環境で、専属看護師によるきめ細やかな対応を行っております。

最近の抗がん剤治療は、以前よりも治療適応が広がってきています。手術の前に抗がん剤を投与する術前化学療法(neo adjuvant chemotherapy)や、手術の後に抗がん剤を投与する術後化学療法(adjuvant chemotherapy)が広く行われています。これらのように手術に抗がん剤を組み合わせることで、治癒切除率の向上や、がん再発の抑制を目指す取り組みがなされています。

また近年では、がんの遺伝子・分子レベルの変異状況を調べることにより、患者さん個々人に適した薬剤を選択するテーラーメード治療が進んでいます。大腸がんや胃がん、肝臓がんなどでは分子標的治療薬が広く使用されるようになっています。
これらに加え、最近ではがん免疫療法が行われるようになってきました。2018年には、本庶佑先生が『免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用』でノーベル医学・生理学賞を受賞されたことは皆さまの記憶にも新しいのではないでしょうか。これらの研究から、がん免疫療法が開発され、以前から使用されている抗がん剤の効果が乏しくなった方にも治療が可能となり、多くの患者さんに福音がもたらされました。また既存の抗がん剤治療と比較し、免疫療法を併用した抗がん剤治療は、がんの進行を抑える効果が高いことが様々な癌種で報告され、現在では保険診療で受けていただける治療法となりました。当院でも多くの患者さんに投与しており、大変効果がある方もおられます。

最後に

私たちにとってがんに罹ることは決して稀なことではありません。日本人の2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで亡くなる時代です。消化器内科の領域では、胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査を定期的に受けていただき、病気の早期発見に努めることが大切です。当院では、おつらくなく内視鏡検査を皆さまに受けていただけるよう、鎮静剤や鎮痛剤を使用し、精度の高い検査に努めております。各種検査や病気に対して不安や疑問がある方は、月曜~金曜日の消化器内科外来にいらして下さい。お待ちしております。

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