ドクターズレクチャー

Doctor's Lecture

下肢静脈瘤につきまして

下肢静脈瘤はどのような病気でしょうか?

【心臓血管外科部長:尾崎医師】


血管疾患の中で最も発生頻度が高く、最も身近に感じられることの多い下肢静脈瘤です。
下肢静脈瘤は、下肢、特に下腿に浮き出た拡張、蛇行した血管のことで、下肢静脈の静脈弁不全が原因で逆流した血液が溜まり瘤となったものです。下腿に静脈うっ血を引き起こし、下肢の重だるさやむくみを発症します。命に関わる疾患ではないことから症状を我慢し、病院を受診せず日々過ごしておられる方も多いと思われます。しかし、長期にわたりそのまま放置していると、徐々に下肢の静脈うっ血は進行し、色素沈着や傷の治りが悪くなるため皮膚の潰瘍形成など、組織に不可逆性の変化が起こってくるため、そうなる前の治療が重要です。

下肢静脈瘤の歴史は長く、古代エジプトで発見された紀元前1500年ごろのパピルスにその記述がみられ、古代ギリシア時代のヒポクラテス、古代ローマ時代のケルススがその治療法について書き記しています。時代を経まして、100年ほど前にバブコック医師により大伏在静脈抜去(ストリッピング手術)が発表され、現在でも重要な治療法として受け継がれています。しかしながら、症状を何とか我慢できないこともないくらいの疾患にしてはその侵襲性はやや大きく、硬化療法、静脈結紮術など、その後その術式は低侵襲化されていき、現在、主流となっているのが、カテーテルによる血管内治療です。

カテーテル治療とはどのようなものですか?

カテーテル治療は、局所麻酔で行い、熱による静脈の焼灼、閉鎖を行う血管内焼灼術と熱焼灼を用いない血管内塞栓術に分けられます。日本では、下肢静脈瘤手術において長らくストリッピング手術が主流でしたが、2013年に血管内治療件数がこれを上回り、その後現在に至るまで、カテーテル治療が大部分を占めるようになっています。血管内焼灼術は、レーザーや高周波カテーテルを静脈内に挿入し、静脈を高温で焼灼して血管内から病変部を閉鎖する方法で、ストリッピング手術と比べ痛みや合併症は非常に少ないものとなっています。血管内塞栓術は、カテーテルを静脈に挿入し、その先端からグルー(接着剤のようなもの)を注入し病変部の静脈を血管内から閉鎖していく方法です。血管内焼灼術では手術中、焼灼する静脈周囲に全長にわたり局所麻酔薬を注入するため、局所麻酔の回数と量が多くなりましたが、血管内塞栓術ではカテーテル挿入部分の麻酔のみで手術が可能となり、より低侵襲化が進みました。

術前に静脈エコー検査を行い、最も適切な、より痛みの少ない術式を選択し手術を行います。もしも、下腿に浮き出た血管があり下肢の重だるさを感じておられましたら、一度、当科を御受診頂けましたら幸いです。

当科では、狭心症や弁膜症などの心疾患に対する心臓手術、大動脈瘤、大動脈解離などの大血管疾患に対するステントグラフト治療を含めた大動脈手術、末梢動脈疾患に対するカテーテル治療及び血管手術、下肢静脈瘤に対する手術など、幅広く心臓血管疾手術を行っておりますのでお気軽にご相談ください。

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