ドクターズレクチャー

Doctor's Lecture

望む治療や生き方に合わせた生活を送ることの必要性

【外科部長(副院長):前田医師】

外科手術における昨今の変化などを教えてください。

近年の高齢化に伴い、外科で手術を受ける患者さんの年齢も、目に見えて高くなってきています。よく患者さんから、高齢なので、手術は受けなくて良いですといわれることがありますが、皆様は何歳までならば手術を受けることが、可能と考えておられるでしょうか?

2021年に当科で手術を受けられた患者さんの最高年齢を見てみますと、予定手術では鼡径ヘルニア90歳、胆石症90歳、胃癌90歳、大腸癌96歳、直腸癌90歳となっています。最近ご高齢でもお元気な方が増えていて、以前であれば、手術することなど到底考えられなかったような年齢の方でも、術後にお元気に生活して頂ける見込みがあれば、ご希望に沿って手術させていただいています。

また、急性胆嚢炎92歳、急性虫垂炎92歳、腸閉塞症93歳、大腸穿孔89歳など、手術リスクのより高いと考えられる緊急手術であっても、予定手術とほぼ同等の年齢で手術を行っています。しかし、注意していただきたいのは、緊急手術では、体調が万全な状態でない場合が多く、手術の危険度はより高くなるということです。

手術を行うにあたり大切にされていることは何でしょうか?

定期手術では年齢の要素以外に、合併疾患とそのコントロールの状況、内服薬のコントロール、普段の介護度、歯科検診の受検状況、ご本人の意志、退院後の生活環境なども考慮して、納得行くまで話し合ったうえで、入退院支援室など様々な部門と連携を取りながら、手術に臨むことができますので、そこが本院の強みと考えています。

一方緊急手術では、手術しなければすぐに命に係わる状況となるために、全身状態を整える時間的な猶予がない場合も多く、時間をかけてご説明することもできず、ご本人にとって事態が把握できないまま、集中治療室にいるような状況になっているのではないかと気になるところです。

緊急手術をご希望されるのであれば、普段から検診や、精密検査を積極的に受診していただき、合併疾患に対するコントロールにも気を配っていただきたいところです。

幸い当院では2021年に当科で手術を受けられた患者さんで、直接亡くなった患者さんはありませんでしたが、緊急手術では、肺炎、心不全、腎不全、呼吸不全、糖尿病などが悪化することも多く、術後に生活の質が低下したために退院先を見つけることに時間を要し、入院が長期化する場合もあります。

最近アドバンスト-ケア-プランニング(人生会議)といって、健康に問題が起きる前から、自分で判断が下せなくなった場合に備えて、どのような治療を望むのかということを、かかりつけ医とともに、ご家族で話し合っていただいて、もしもの時に後悔のない判断ができるように準備しておいて頂くことが、求められています。人の数だけ、生き方に対する考え方はあって当然ですので、普段から、自分はどのように生きたいのかを考えて、それに合った生活を送ることが大事ではないでしょうか。

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