ドクターズレクチャー

Doctor's Lecture

循環器疾患と生活習慣病について

【副院長 循環器内科部長:井上医師】

循環器疾患と生活習慣病の関連、それに対する予防医療について教えてください。

脳血管疾患と虚血性心疾患を含む循環器疾患は日本の主要な死因の1つですが、これらは単に死亡を引き起こすだけではなく、後遺症のために、日常生活動作能力(ADL)の低下を引き起こし、個人的にも社会的にも負担を増大させます。循環器病発症の危険因子は、高血圧、喫煙、糖尿病などの生活習慣病です。生活習慣の改善は、循環器疾患を予防に重要です。循環器疾患の多くは、血管の異常によって引き起こされます。「人は血管と共に老いる」…..これは、約一世紀前の偉大な医学者ウイリアム・オスラーの言葉です。人の寿命というのは血管で左右されるという意味ですが、今でもあてはまる言葉です。この血管を守るために、我々は、予防医療にも精力的に取り組んでいます。

現在の社会情勢を踏まえた、循環器疾患の取り組みについて教えてください。

現在は、ストレス社会です。心臓はストレスに敏感な臓器で、心臓病の発症には精神的ストレスが重要な役割を果たしていると考えられます。一方で、新型コロナウイルス感染症の蔓延が社会を一変させ、多くの人々が、精神的、社会的、職業的ストレスが負荷されている状態です。職場では、こうしたストレスから、精神的な障碍から職場を離れざるを得ない方も見受けられます。Heartは、「心臓」とも訳しますし、「こころ」とも訳します。人の「こころ」に影響することは、心臓にも直接的な影響を及ぼします。こうした精神的なケアも循環器疾患診療には重要であると考えています。

日本は急速に高齢化が進んでいます。2025年には、団塊の世代が後期高齢者となり、3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という超高齢化社会を迎えることになります。一方で、世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみの 世帯が増加していくことが予想されています。この超高齢社会では、疾患構成や、社会的状況が大きく変化してきています。こうした社会情勢に対応した取り組みも大切です。現在のこうした状況では、「治す医療」だけではなく、「治し支え合う治療」が求められていますと考えています。患者さん自身が、自分の疾患と向かい合い、自己管理能力の取得も必要と思います。こうしたことから、当科では、「心不全教育入院」という新しい取り組みを始めました。そこでは、心不全療養における生活習慣改善のポイントを学んで頂き、また心不全の家族会を開催し、地域社会で心不全療養に取り組む試みも始めています。

私は、以前「大還暦考 120歳まで健やかに、美しく生きるには」(洋學社)という拙著を出しました。その中では、日々診察室で高齢者の患者さんを診させて頂くなか、健康で長生きする術を私なりに考えたものをお伝えしました。そしてそれは、還暦を迎えた私自身に対する戒めを込めたものでもありました。高齢化社会、ストレス社会の医療の問題点にも触れていますので、ご興味があれば、ご一読お願い致します。

神戸労災病院で、精力的に行われている、心臓リハビリテーションについて教えてください。

心臓病を抱えた患者さんの日常生活の質の向上に努めるのも循環器医の重要な責務です。当科では、心臓リバビリテーションを中心とした包括的な医療にも情熱をもって取り組んでいます。以前は、心筋梗塞に一旦なると絶対安静を強いっていました。しかし、現在は、その病気の状態に準じて、身体活動を行っていく、心臓リハビリテーションが積極的に行われてきています。心臓リハビリテーションによって、その後の心筋梗塞の発症が大きく低下することが報告されました。

心臓リハビリテーションは、医師や看護師だけなく、理学療法士、薬剤師、臨床心理士、臨床検査技師など、多くの職種が関わって、ひとりの患者さんをトータルにみていくというプログラムです。当科では、平山園子部長を中心として、こうした包括的な取り組みにより、心臓病の患者さんの低下した体力を回復をめざしていきます。さらに、それだけでなく精神的な自信を取り戻して、社会や職場に復帰し、心臓病の再発を予防することを目的としています。現在の医療の流れに、心臓リハビリテーションのように、多くの職種がそれぞれの専門性を生かし、タッグを組んで行っていく取り組みがあります。これを、多職種連携といいます。ひとりの患者さんに対して、様々な方向から、向き合っていくものです。心臓リハビリテーションで重要なことは、多職種連携である考えています。

最後に、患者様に一言メッセージをお願いします。

患者さんに寄り添う診療に心がけ、地域の皆さんが健康で過ごせるお手伝いが出来ればと思っています。よろしくお願い申し上げます。

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