第58回日本心臓病学会の発表を通じて、感じたこと 【研修医だより5】

高齢者心不全と独居の関連について、日本心臓病学会で発表しました。

神戸労災病院 後期研修医 河相優

 記録的な猛暑も和らぎつつあった2010年9月19日、東京国際フォーラムで行われた「第58回日本心臓病学会総会」、そこで私は高齢者の心不全患者における特徴について発表をさせて頂きました。

 超高齢化の波は、私たちの病院にも押し寄せており、実際、我々の病院でも、特に80歳以上の方が非常に多いという特徴があります。そこで私の今回掲げたテーマは「高齢者の心不全症例における臨床的・社会的特徴を調べ、治療的介入の余地を検討する」というものでした。高齢者は、心不全をお持ちであっても、いろいろな疾患を合併し、不幸にも心臓以外が原因で亡くなってしまう方も非常に多いため、全国的にもなかなか大規模な研究ができていないのが現状です。いま日本中で行われている診療の中で何か良い方向に改善できるファクターはないか、それをテーマとして掲げ、過去に遡り、我々の病院で診療した高齢者の臨床的な,さらには社会的な特徴を検討しました。

 導き出されたキーワードは「高血圧」と「拡張障害型心不全」、それと「独居」というものでした。一般にも言われていることですが、特に、80歳以上の方では,心臓の収縮能力が保たれている、つまり心臓自体はしっかり動いているにもかかわらず、心不全に陥ってしまうという方が非常に多く、さらにそういった方では高血圧になっている方が非常に多いのです。このことが、ずいぶん前から「拡張障害型心不全(心臓が固くなり,広がりにくくなることによって心不全に至るという概念)」として提唱されており、私たちの調査でもそれに合致する結果が得られました。もうひとつは。一般社会のデータに比べ、心不全の患者さん、特に高齢者では、独居の方が非常に多いということです。高齢者では認知症や運動器疾患等によって、生活能力が落ちていることが多く、そのせいで、本来ならもっとよくなっていたかもしれない心不全患者さんが助からないというケースも多いのではないでしょうか。これを最も改善できるのが「独居を減らす」ということではないかと私たちは考えました。

 独居老人の熱中症死、さらには死亡届を出さず年金を受け取り続ける者など、高齢者の独居は、この夏,何かとニュースを盛り上げることの多かった話題です。今回の研究で、高齢者の独居という社会的因子が、心不全の発症に少なからず、関連していることが明らかになりました。

 今回の発表を通じて、日々の診療が重要なのは言うまでもありませんが、こういった小さな研究を積み重ねていくことでも、ひとりでも多くの患者さんの笑顔につながるのではないかと強く感じました。今回の発表が私にとってもちろんゴールではなく、日々の研修に励み、循環器科医として自立し、さらに世界に情報を発信する、そんな夢に向かって、努力していきたいと決意しています。