心臓血管外科との連携からウジ虫治療(マゴットセラピー)まで~心と体を包む臓器「皮膚」の最新治療~

 心臓血管外科との連携からウジ虫治療(マゴットセラピ-)まで~心と体を包む臓器「皮膚」の最新治療~

 

皿山泰子医師この夏、あせも、水虫、日焼けなどに悩まされた人も少なくないでしょう。また、アトピーや生活習慣病に起因する皮膚疾患に関する悩み、美容目的のレーザー治療などで皮膚科を訪れる患者さんも増えてきているようです。
皮膚は、皆さんの心と体を包む大きな臓器。さまざまな要因によって引き起こされる体調の異変が、色々なサインとして皮膚疾患に表れ、ときには肢体切断などの深刻な治療が必要となることも・・・。

外科や内科、カウンセラーとも連携しながら、多様な疾患と向かい合う皮膚科の皿山泰子医師に、最新の治療法についてうかがいました。

 

内臓疾患が原因の皮膚病が増えている

Q:皮膚科で治療を行う疾患には、どのようなものがありますか?

A:湿疹、火傷、水虫、ニキビ、アトピーのように、皆さんにとって比較的身近に感じられるものから、入院や手術が必要なものまで、さまざまです。ダイレーザー照射による赤いあざ(血管腫など)の治療や、人工爪・超弾性ワイヤー治療といった爪矯正も行っています。
これらの疾患の中には、皮膚そのものに傷がついたり炎症を起こしているケースだけでなく、ガンから皮膚病の症状が出たり、糖尿病から足に潰瘍が出来たりといった、内蔵疾患が原因のケースもあるので、早期発見が重要です。
神戸労災病院は常時15~20床の入院加療にも対応していますし、心臓血管外科のスペシャリストである脇田昇医師を始め、他の専門分野との連携治療ができるところが強みです。

Q:近年、増加傾向にある疾患はありますか?

A:予備軍の方まで含めると、動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病を患う方が年々増えてきており、それに伴って血管性の皮膚疾患が増えてきました。
たとえば、静脈性の代表的なものが「下肢動脈瘤」です。足の血管がこぶのように膨らみ、痙攣やむくみ、疲れやすい、かゆみを感じるといった症状が出ることもあります。血行が悪くなりがちな冬季に多く、男女比で言うと女性が圧倒的に多いですね。軽症の場合は、エコー検査によって細くなっている血管を捜し、硬化剤(ポリドカノール)を1回に5~6ヶ所注射するという15分程度の治療で改善が見られます。妊娠・出産、老化などが原因となることもありますし、立ち仕事をしている方に、しばしば見られる症状なので軽視しがちですが、進行すると手術が必要になるケースも・・・。見た目が悪いだけの疾患ではないんですよ。

 

創傷治療は心臓血管外科とタッグを組んで

Q:命に関わるような重篤な症例もあるのでしょうか?

A:同じ血管に起因する皮膚疾患でも、動脈性の「下肢創傷」は、さらに注意が必要です。たとえば、閉鎖性動脈硬化症によって足の切断を余儀なくされることもありますし、最初はほんの小さな傷であっても、「重症虚血肢」に至ると1年後には20%が死亡するというデータがあるため、決してあなどれません。
「下肢創傷」は、一般的には形成外科の担当で、皮膚科にとっては、まだまだ新しい分野なのですが、当院では心臓血管外科などと協力し、できるだけ足を切断せずに済む治療を目指しています。具体的には、心臓血管外科でバイパス手術など血管内の治療を行って血行を再建する一方で、皮膚科での創傷治療を並行していくということです。
創傷治療にも新しい治療法が出てきており、その一例が「マゴット(うじ虫)セラピー」です。滅菌した医療用のウジ虫(ヒロズキンバエの幼虫)を患部に載せておくと、栄養分として24時間食べ続けてくれて、少しずつ治癒に至るというものです。戦時下で偶然発見されたウジ虫の働きを応用したもので、兵庫県下でもまだ数件しか実施していません。メスやハサミを使わないため、患者さんの痛みを軽減する点がメリットです。

 

早期発見&予防に繋がる「フットケア」

Q:皮膚疾患を予防するためには、どうすればいいですか?

A:糖尿病や人口透析など、リスクとなる持病がある方は、目に見える傷だけでなく、「長く歩くと痛い」といった感覚障害のサインを見過ごさないことが大切ですね。また、栄養士による栄養指導も行っているので利用していただければと思います。傷を修復するために大切な栄養が奪われてしまうと、内臓疾患の治癒が進まなくなりますから。
当院では今年から、早期発見と予防につながればと、皮膚科医に加え、看護師、栄養士、リハビリ担当者らが連携し、「フットケアチーム委員会」を発足いたしました。タコの手入れや爪の切り方指導、足に合ったインソールの選び方など、日常的なケアについてお話ししながら、さまざまなご相談に対応しています。また、臨床心理士に週2回、アートセラピーの専門家に週1回ずつ来てもらい、アトピー性皮膚炎やじんま疹をはじめとする、精神的ストレスが引き金となる皮膚疾患の回復にも努めています。

このように皮膚疾患の原因はひとつではなく、「どこの科にかかればいいかわからない」ということも少なくないでしょうが、だからこそ当院の総合力を信頼し、窓口として皮膚科を訪ねていただければ幸いです。

 

 

 

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