“暗黒の臓器”と言われる小腸を含め消化器内部の検査と治療が可能に~カプセル内視鏡&小腸ファイバー~

先端にレンズなどを装着したチューブを体内に挿し入れることで、消化管の内部を観察する内視鏡。患者さんにとってダメージの大きい開腹手術を行うことなく、処置や治療を行えることから、近年、広く普及してきました。しかし、チューブを飲み込む際に不快感やのどの痛みを感じる方も少なくありません。
そこで開発されたのが、錠剤と同じように飲み込める「カプセル型内視鏡」です。その仕組みや検査・治療への応用の可能性について、消化器科副部長の久保公了医師に話を聞きました。

ルーツは軍事用の精密小型カメラ

Q:カプセル型内視鏡は、どのようなサイズ・形状なのですか?

A:小指の先くらいの大きさで、カプセルの錠剤と同じような形をしています。ごく小さい機器ですが、体内で1秒間に2枚の画像を撮影し、それを体外に無線送信する機能を備えた高性能の精密機器です。もともとはイスラエル国防省内の研究所で軍事目的のカメラとして開発が進められてきたものを、医学分野に応用したものです。

Q:カプセル型内視鏡による検査の手順を教えてください。

A:まず、検査日前日は夕食を早めに済ませ、翌日の朝食を含めて検査までの間だけ食事を控えていただきます。あとは錠剤と同じようにカプセルを水で服用していただくだけ。従来の内視鏡のように管を挿し込むわけではないので、カプセルが体内の中にある間も、患者さんは自由に動くことが可能です。
個人差はありますが、胃腸のぜん動によってカプセルが移動していきますので、口にした食べ物が排便されるのと同じように――内服から8時間前後で小腸と大腸のつなぎ目あたりに到達し、翌日には排出されるのが一般的です。その間に撮影された約6万枚程度の画像をもとに、医師が画像診断を行います。

 

原因不明の消化管出血を解明できる

Q:どのような症状のとき、カプセル型内視鏡検査が有効ですか?

A:下血や貧血などの症状があり、消化管出血が疑われるものの、胃カメラ及び大腸カメラなど従来の検査では原因がつきとめられないケースなどで有効です。
もちろんこれまでにも小腸造影(X線撮影)やCTといった検査はできましたが、内視鏡ほど詳細に調べることはできません。ところが小腸は6~7メートルと長いうえに、自由に伸び縮みするやわらかい管がクネクネと曲がりくねった消化管で、従来の内視鏡の管が通りにくく、検査が困難だったのです。医療関係者の間では“暗黒の臓器”と呼ばれていたほどです。
内視鏡検査が実現したことで、小腸内での出血やポリープなどの早期発見、早期治療につながるのではないかと期待されています。実際、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬など)を繰り返し服用している方を検査すると、小腸にびらんが出来ていることが珍しくないですし、欧米人に比べると罹患率は低いですが小腸ガンの可能性もあります。

Q:自動撮影で、必要な画像がもれなく撮れるのか心配です。

A:カプセル内視鏡で診断がつかない例も少なくはないのですが、食べ物と同じルートをたどりながら、毎秒2枚を撮影していくので、ほとんどくまなく撮影できていると考えています。従来のバリウム検査より、はるかに病変発見能力は高いです。また、磁力でリモートコントロールできるものやキャタピラを装備した自走式内視鏡の開発も進んでいるので、今後ますます精度が上がっていくでしょう。

 

小腸ファイバーの導入で治療も可能に

Q:内視鏡検査で異常が見つかった場合、どのような治療が受けられるのですか?

A:小腸にも挿入可能なバルーン構造の新型内視鏡“小腸ファイバー”が開発されており、当院でも2010年10月に導入しました。
従来の内視鏡では、小腸のやわらかい腸管を伸ばしてしまい、奥まで届きませんでした。そこで、バルーン付きの外筒を内視鏡と一緒に用いて、腸管をアコーディオンのように折りたたんで進めるように改良したのが“小腸ファイバー”です。
カプセル型内視鏡によるスクリーニングと小腸ファイバーを組み合わせれば、細胞を採取して精密検査を行ったり、ポリープの切除や出血部位の止血といった治療を施すことができるでしょう。チューブは口もしくは肛門から挿入するため、開腹の必要はありません。

Q:カプセル内視鏡や小腸ファイバーを使った検査・治療に関する注意点はありますか。

A:神戸市内では、当院を含めて数ヶ所の病院でしか導入されていないため、まだまだ身近な検査・治療法とは言いがたいですね。また、カプセル内視鏡検査は2007年10月から一部症例について保険適用されたものの、検査費が比較的高額であることは否めません。
ただ、腸管内に狭さくが見られる場合などを除いては、患者さんの体への負担が少なく、検査中も行動に制約がないことは魅力です。何より、小腸ファイバーとの併用により、これまで検査が難しかった小腸にアプローチし、精密検査や治療ができるようになったことは、非常に大きなメリットだと感じています。

 

※カプセル内視鏡は事前に上部消化管検査及び下部消化管検査をし、原因不明の消化管出血を伴う小腸疾患の診断をおこなう患者様のみが対象となります。

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