管理栄養士は語る 「健康にやせる」ための食生活

 肥満を解消したい中高年や美容が気になる女性、そして、働き盛りの皆さんにとって、「健康的にやせる」ことは共通のテーマです。
「最近、脂肪のとり過ぎが気になって…」「健康診断で、メタボに気をつけるよう言われた!」「無理のないダイエットってあるの?」など、疑問や悩みをお持ちの方も少なくないでしょう。
 

そこで今回は、神戸労災病院の栄養管理室に所属する3名の管理栄養士に、栄養指導の実際と健康にやせるための“食事のコツ”などについて聞きました。

回答者
神戸労災病院 管理栄養室
室長・管理栄養士 久永 文(あや)
管理栄養士 福島 幸子
管理栄養士 枝廣 由季子

 

Q:病院で栄養指導を受けられるのは、どんな方が多いのでしょうか?

A:医師の健診なしに病院の栄養指導を受けることはできませんから、定期的に人間ドッグを利用しておられるなど、健康情報に敏感な方のご利用が多いですね。メタボ傾向がある方は、結果をつきつけられたり、厳しい食事制限を強要されたりすることを敬遠しておられるのかもしれません。
また地域の中核病院である当院では、企業が実施されている集団健康診断や、かかりつけの医院の診断を受けた方に対する2次健診も受け付けています。「会社で言われたから」と、しぶしぶ来院する方も少なくないですが、体重や体脂肪率などの数字に改善の兆しが表れ始めると、俄然やる気を出してくださいます。

Q:メメタボの診断基準や日本肥満学会が定義している肥満の基準を超えていなければ、とりあえず安心ですか?

A:基準はあくまでも目安にすぎません。身長や体重、腹囲、BMIなどの値が似通っていても、性別や年齢によって体の組成はまったく違うでしょう。当院で栄養指導依頼をお受けした場合は、まず正確な体組成を測定します。その結果によって、筋肉量が少ない人なら食事制限と一緒に軽い運動を始める、むくみ傾向のある人なら塩分を控えるなど、お一人おひとりの体質や悩みに応じた指導を行います。肥満の方だけでなく、痩せすぎの方の貧血症を改善するといったケースもありますよ。

  

Q:メタボもしくはメタボ予備軍の方にみられる「食生活の傾向」はありますか?

A:神戸という土地柄もあってか、ケーキやパンをよく召し上がる方、外食や飲酒の機会が多いという方が目立ちます。地方ならお祝い事があるときにしか買わないようなごちそうが歩いていける範囲で手に入るのですから恵まれているというか悩ましいというか・・・。しかも、「コミュニケーションの一環」とか「ストレスを癒すため」と、食事の一部であるという意識が薄いことが、慢性的なカロリーオーバーの原因になっているように思います。

Q:では、栄養指導をされるときは、「間食をやめてください」とか「カロリーを減らしましょう」といった食生活の改善を提案するのですか?

A:こちらから命令するような形で食事内容や摂取カロリーなどを決めても、本人が納得しない限り続かないことが多いもの。そこで、今の食生活にどんな問題点があるのかをご自身で考えていただき、「では、どうすればいいと思いますか?」とお尋ねするよう心がけています。
はじめは、「そんなに食べていません」「太りやすい体質だから」と話していても、質問を重ねていくうちに、「もしかしたら、あれが原因?」と思い当たるフシが必ず出てきます。たとえば、IT企業にお勤めの男性は、外食の回数も少ないし食事量もごく普通だと言っておられましたが、仕事中に大量の「低カロリーのガム」を噛むのが習慣になっていることに気づきました。「シュガーレスでも、カロリーはあるんですよ」と説明したら、驚いておられましたね。
原因がみつかれば、「ガムの代わりに水を飲みます」「毎日晩酌するのは飲みすぎなので、週3回にしてみます」といったふうに、自分の意思で目標を決められるようになります。

 

Q:栄養について深い知識がなくても、バランスのいい食事をするコツはないですか?

A:簡単なのは、食事を「単品」で終わらせず、品数を増やすこと。たとえばパンの場合、菓子パンではなくサンドイッチを選べば、野菜やたんぱく質もとれます。また、栄養素まではわからなくても、赤・緑・黄・白・黒・・・と、さまざまな「色」の食べ物を口にするようにすれば、バランスの良い食事に近づけられます。
食品の栄養表示を見るのもいいですね。同じ食べるにしても、中身を知っていて食べるのと意識なく食べるのとでは大違い。もし缶入りカフェオレに入っている砂糖の量がわかっていれば、微糖コーヒーか日本茶でもいいのでは、と別の選択肢が浮かぶようになってきますから。

Q:テレビの健康番組や雑誌のダイエット特集などを参考にしてもかまいませんか?

A:食材に含まれる栄養素とその効用について、わかりやすく解説しておられるなと感心するものが多いですが、どんな食べ物にもメリットとデメリットがあり、食べ過ぎれば肥満の原因になるということをお忘れなく。たまたま目にしたものに飛びつくのではなく、年間を通じて紹介された様々な食品の良いところを採り入れるためにも、バラエティ豊かなメニューを楽しむことをおすすめします。
 同じように、「カロリーゼロ」「甘さひかえめ」といった表示についても、“本当の意味”を読み取る目を持ちましょう。サプリメントや健康食品も「採れば採るほど健康になる」魔法の食品ではありません。栄養の“足し算”だけでなく、“引き算”もするよう心がけて下さい。

 

Q:最後に、食生活の改善に成功する秘訣をお願いします

A:「ダイエットは明日から」という意識ではダメ! 小さなことでも、今すぐ始めて気長に続ければ成果は出ます。目に見えて痩せるようなスピードではリバウンドが起こりやすく、痩せにくい体になるので要注意。また、自律神経の乱れが食生活の乱れにつながっているケースも多いので、眠れない、急に甘いものが食べたくなった、といった体調の変化があったら、ダイエットの前に“心を安定される”ことを考えましょう。体重減少=健康とは限りません。メタボ検診や栄養指導をきっかけに、「自分にとっての健康とは何か」を考え直す時間をもってみるのもいいと思いますよ。

 

 体成分分析装置による分析

この日撮影を担当したTさん(男性・40歳・痩せ型)の体組成データ。体重や体脂肪率はもちろん、骨量や筋肉量が多いか少ないか、むくみ傾向はどうかといったデータが、生活習慣の改善ポイントを考えるヒントになります。
病院で行う栄養指導は病気にもとづいて、医師の指示によりおこなわれます。
病気ではないが健康のこと、病気のこと、栄養のことに興味がある方、神戸労災病院では健康・病気・栄養等を題材にした予防医療セミナーを定期的に開催しています。ぜひ、参加してみてください。

    
※当院での診療で、医師に必要と認められた場合のみ、分析を受けることが出来ます。

 

 

記者の感想:はじめは白衣姿を見て緊張しましたが、栄養士の皆さんも「おいしいものを食べたいけど健康でいたい」・・・など、私たちと同じ悩みを抱える女性だとわかって親近感がわきました。何気ない会話を通じて、体型にしろ食生活にしろ、自分なりのベストをみつけることが大切だと教えて下さるあたりは、さすがプロ。今回のアドバイスを心に留めて、毎日の食生活を見直してみたいなと思いました。