重だるさや色素沈着などを改善し 元気にレジャーや運動を楽しめる足 に ~進化している下肢静脈瘤の治療法~

長時間立ち仕事が続く職業や、出産を経験された女性などに多くみられる下肢静脈瘤は、静脈弁が機能不全を起こして血液を心臓にうまく戻せなくなる病気です。命を左右する病ではないため治療をせずに過ごす人も多かったのですが、当院では日帰りも可能な血管内治療をはじめ、症状に合わせたさまざまな治療を行っており、患者さんが急増しています。
治療の仕組みなどについて、脇田昇副院長と心臓血管外科の尾﨑喜就医師に詳しく聞きました。

 

 

Q:下肢静脈瘤の主な症状を教えてください。普通の「むくみ」とは違うのですか?

脇田:「足が重い、だるい」「頻繁に足がつるようになった」「足の表面に血管が浮き出してきて、瘤のように膨らむことがある」…そんな症状をきっかけに、診療を望まれる方が多いですね。
健康な方でも、朝から夕方まで立ちっぱなしの仕事をしたりしたら、むくみが出ることはありますし、手足を心臓より下に置けば静脈が青く浮き出てくることはあります。下肢静脈瘤と診断がつくには、「静脈内の血液が(うまく心臓に戻らず)逆流を起こしているか」がポイントとなります。本来なら血液の流れをコントロールする弁が壊れてしまい、逆流した血液の圧によって血管が膨らみ、ひどい場合は色素沈着など皮膚表面にまで変化をもたらすケースもあります。

美容師さんや調理師さんのように、長時間の立ち仕事やデスクワークなどで常に強い負荷がかかった状態が続いたり、出産時にいきむことで大きな圧がかかったりすることで、静脈弁に不全が起こると考えられています。

Q:どんな治療法があるのでしょうか?

wakita脇田:基本は、血液の逆流を遮断すること。大きくわけると、「くくる」「かためる」「取り去る」という3つの治療法があります。残念ながら、塗り薬や飲み薬で治ることや自然治癒することはありません。
まず、「くくる」というのは、手術により足のつけ根で血管をくくって(結さつして)血液の逆流を食い止める治療法です。ただし、一度くくっても再開通したり、周辺の細い血管が脇道をつくって逆流が収まらないといったケースもあります。いまは、もっと良い治療法が出来てきたので、実施件数は減っています。
「かためる」=硬化療法は、瘤のある部分に薬を注射して固めることで、流れを止めます。比較的小さな静脈には有効ですが、左右の太ももの内側に通っている大伏在静脈や、左右の太ももの外側に通っている小伏在静脈のような大きな血管にアプローチするなら、「取り去る」治療のほうが適しています。
尾﨑:「取り去る」治療法の代表格が、機能不全を起こしている静脈を引き抜く「ストリッピング手術」です。ただし、入院が必要ですし、外から見えないとはいえ体の内部に大きな傷が出来てしまうので、最近は「血管内治療」を選ばれる患者さんが増えてきました。これは、静脈の中にカテーテルを挿入し、内側から高周波(ラジオ波)またはレーザーで焼き取る低侵襲な手術法です。ケースバイケースですが、局所麻酔だけで済み、日帰り治療ができることが大半です。術後の回復も比較的早いですね。

 

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Q:大きな血管を取り去っても支障はないのですか?

脇田:下肢静脈瘤を引き起こす大伏在静脈や小伏在静脈は皮膚のすぐ下を流れる「表在静脈」
ですが、その奥にある「深部静脈」が血液を心臓に戻すポンプ作用の要として頑張ってくれているので、心配はありません。むしろ、機能不全を起こした血管を残しておいてもポンプ作用の効率を下げ、深部静脈に負担をかけるだけなので、手術で取り去れば足の動きがラクになるはずです。
ozaki 症状がごく軽いときは、足首からふくらはぎ、太ももまでを段階的に圧迫して血流をコントロールする「弾性ストッキング」を使うのも良いでしょう。治療にはなりませんが、症状の緩和や治療後のケアなどに役立ちます。きついほど効果があるというわけではないので、履いてみて快適なものを選んでください。

尾﨑:適度な運動(とくに、ふくらはぎを使うような)で血行を促す、塩分・油分の多い食事を避ける、肥満を改善するといった心がけで“悪化”を避けることはできますが、治るわけではありません。10年、20年と放置するうちにジワジワと進行しますので、気になる症状がある方は一度ご来院ください。診察(問診・視診・触診)やエコー検査などで状態を知り、最適な治療法を一緒に探していきましょう。

Q:術後に運動をしても構いませんか?

脇田:手術直後でなければ、運動を控える必要はありません。実は、スポーツジムなどで患者さんの“口コミ”を聞いて来院されるケースが少なくないのです。というのも、手術治療によって色素沈着や大きな瘤などが改善されると、他人に足を見られるのが恥ずかしくなくなり、ジムに通うのが楽しくなられるようで…。
お気に入りの足でアクティブに過ごすことは、下肢静脈瘤に限らず、あらゆる病気を寄せ付けない最高の予防法だと思います 。