骨の量と質に加え体組成なども測定 多職種連携でテーラーメイドの診療を ~健康寿命を伸ばす骨粗鬆症対策~

超高齢社会に突入した日本では、いかにして健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)を伸ばすかが大きな課題となっています。そこで、気を付けなければならないのが「骨粗鬆症」。命に係わるような病気ではないものの、骨粗鬆症による転倒や骨折をきっかけに身体機能が低下して運動要介護状態や寝たきりになる例が少なくないからです。
2015年7月より新設された骨粗鬆症外来を担当する楊鴻生医師にお話を聞きました。

 

骨折してから気が付いたのでは遅すぎる!

Q:骨粗鬆症とはどのような病気なのでしょうか?

:骨の密度や質が劣化して、強度が低下することにより、骨が折れやすくなった状態が骨粗鬆症です。
病気そのものは1948年に発見されていたのですが、1980~90年代にかけて骨密度を測定する方法が普及したことで、「骨粗鬆症」という名称が広く一般に知られるようになり、原因や治療法に対する研究も進むようになりました。

骨が折れやすくなったといっても、当初は症状が出ませんので、検診を受けないまま静かに症状が悪くなってしまうケースがあります。転倒して骨折したり、脊椎に痛みを感じたりして初めて骨粗鬆症だと気づく方が少なくないですが、それでは遅すぎるんです。
目安としては、25歳の時に比べて身長が4センチ以上縮んでいたら、骨粗鬆症の疑いがあります。とくに、生活が不規則である、喫煙や深酒の習慣がある、糖尿病・腎臓病・高血圧・胃腸障害などの持病があるという方は、骨の質を下げるファクターが大きいので、より注意が必要でしょう。また、女性は閉経を境に一気に骨量が減ってしまう傾向があり、患者数でも男性を大きく上回っています。まだまだ研究途上ですが、遺伝的に骨粗鬆症になりやすい方や、治療薬が効きにくい方などもいるようです。

 

Q:骨密度を測る超音波検査などを受けていれば早期発見や予防に役立ちますか?


:もちろん、定期健診を受けることは素晴らしいことです。ただし、足のかかとの骨に超音波をあて骨密度を測定する「超音波測定法」や、手のひらをX線撮影して画像の濃淡から骨量を算出する「MD法」など、局所を測定する検査だけでは、大腿骨や背骨といった体を動かすうえで重要な役割を果たす大きな骨の強度まで知ることはできません。
さらに、最近の研究で骨の「量(密度)」だけでなく「質」も大事だということがわかってきました。また、骨がある程度丈夫であったとしても、筋力が低かったり反射神経が鈍っていたりして転倒の頻度が高くなれば、骨折のリスクも高くなってしまいます。
これからの骨粗鬆症診療は、ロコモティブシンドローム(ロコモ症候群)などで身体がぜい弱になっていないか、外見はがっしりしていても脂肪量が多いだけで筋肉量は少ないのではないか、反射神経が鈍っていないか…等々を、総合的に診ていかねばなりません。

 

 国内でも珍しい多科・多職種連携による診療

Q:新設された「骨粗鬆症外来」では、どのような検査・治療が受けられますか?

topic13_fig2:神戸労災病院では、骨の量や質はもちろん、筋肉量や脂肪量などの体組成まで測定でき、かつ股関節の構造と骨密度から骨折しやすいかどうかを解析できるシステム(HAS= Hip structure analysis)の入った検査機器を導入しました。およそ20分で全身・局所をくまなく測定できるので、受診されたその日のうちに結果をお伝えできるでしょう。

さらに、これは日本で初めてに近い試みとして、「多職種連携」による骨粗鬆症治療チームを結成しました。医師を中心に管理栄養士、理学療法士、放射線技師、看護師らがタッグを組み、継続的な治療に取り組めるようサポートします。たとえば、診察した医師から「カルシウムをしっかり摂ってください」と指導されても、カルシウムのサプリメントを飲んで終わりでは、あまり治療効果は期待できません。まずは、普段からどのような食生活をしているか、運動習慣はあるのかないのか、といった患者さん個々のライフスタイルを把握すること。その上で、無理なく取り入れられるような食生活の改善を栄養士が指導し、体力や筋力に応じた運動を理学療法士が提案し、看護師らの温かい声がけで継続をサポートするといったチーム医療で治療をバックアップしていきたいですね。

また、総合病院の強みを生かし、糖尿病や腎臓機能の低下といった骨粗鬆症を引き起こしやすくする病気に対しても並行してアプローチする多科連携も重要だと考えています。

Q:治療によって、弱った骨を強くすることはできるのですか?

topic13_fig1:成長期を過ぎた患者さんの場合、骨の大きさを増やすことはできませんが、密度と質を上げることは可能です。検査を受けてみて骨強度に大きな問題がないことがわかった方は、転倒に気を付けながらウォーキングなどで骨に適度な刺激を与え、栄養たっぷりの食事を摂ってあげれば良いでしょう。少し骨強度や筋力に不安が出ている方であっても、理学療法士と相談しながらレクリエーションのようなもので体を動かす習慣をつければ徐々に良くなると思います。最近は、骨の吸収を抑制する薬や形成を促進する薬の開発も進んできているので、高齢だからとあきらめることはありません。

神戸労災病院は地域の中核病院としての役割も担っているので、老人保健施設との連携や、地域のクリニックとの病診連携にも積極的に取り組んでいます。普段は通いやすい施設でこまめに指導を受けながら、当院で年数回の定期健診を受けて経過を確認していただくことで、QOLの高い暮らしを長く続けていただきたいと願っています。