内視鏡検査による早期発見で胃がんは「予防できる感染症」になる!?~保険適用で注目集まるピロリ菌除菌~

内視鏡検査による早期発見で 胃がんは「予防できる感染症」になる!? ~保険適用で注目集まるピロリ菌除菌~

 

kubo2014年5月、当院では、内視鏡検査による消化器系がんの早期発見を、これまで以上に推し進められるように、内視鏡検査室を拡張いたしました。
2013年2月に、ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)感染胃炎に対する除菌の保険適用が認められました。ピロリ菌除菌は胃がん発生を抑えるうえで大きな役割が期待されています。
将来的には「胃がん撲滅」につながると内視鏡検査やピロリ菌除菌の効果について、消化器内科部長の久保公了医師に話を聞きました 。

 

プライバシーにも配慮した最新の検査室

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Q:2014年5月に拡張された内視鏡検査室の設備を教えてください。

久保:従来の検査室には3台の内視鏡を設置し、上部消化管検査で約4500件、下部消化管検査で約2500件、年間でおよそ7000件に対応していました。しかし、内視鏡を使った検査や内科的治療のニーズは年々高まっており、特にピロリ菌胃炎の診断には内視鏡検査が必須な為、内視鏡検査のニーズの高まりに内視鏡設備が対応しきれていない状況になっていました。
 そこで、検査室のスペースを拡張するとともに内視鏡システムを4台に増やしました。以前に比べて予約が取りやすくなったと思います。4台の内視鏡システムのうち2台は、NBI(狭光帯観察)という画像診断に適したモデルで、特定の周波数の光を調整することで、粘膜内の血管などを鮮明に映し出すことができ、食道癌の早期発見には特に有効です。
また、検査室と検査室との間に壁を設けて、個室に近い雰囲気をつくるとともに、患者さんのプライバシーを保てるよう配慮しました。

 

Q:内視鏡を用いたピロリ菌検査とは、どのようなものですか?

久保:内視鏡検査は、まずカメラで胃の内部の様子を観察することから始めます。もし、赤くなっているとか腫れがあるといった異常があれば、慢性胃炎の疑いがあります。その際は生検鉗子(せいけんかんし)という器具を使って胃粘膜の一部を採取し、迅速ウレアーゼ試験というものを行います。
「迅速ウレアーゼ試験」は、ピロリ菌が尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する特性を利用して、PH値の変化でピロリ菌の有無を調べます。内視鏡検査後、短い時間で結果が出る試験法です。

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Q:内視鏡を使わない検査もありますか?

久保:もちろん使わない検査もあります。患者さんの中には胃粘膜を傷つけることによる出血のリスクが心配な方もいらっしゃるので、その場合は血液または尿を採取してピロリ菌の抗体の有無を調べます。当院には最新の検査設備が整っておりますので、採血したその日のうちに検査結果をお知らせすることができます。

 

 胃がんの発症を1/3に減らすピロリ菌除菌

 

Q:ピロリ菌除菌の治療はどのような内容で、成功率は何%くらいでしょう

久保:1回の治療につき、2種類の抗生物質と、その作用を高めるお薬を2週間飲んでいただきます。患者さんによって抗生物質の効き方などに個人差はありますが、全国平均で75~80%の患者さんが完全除菌に成功しています。現在、保険適用は2回までとなっており、2回目の投薬で除菌できた方まで含めると、98%の方が除菌できたことになります。
2次除去までで除菌できないケースでは、抗菌薬に対して耐性のあるピロリ菌(耐性菌)を保有していることが考えられます。その場合、当院では自費診療にはなりますが、3次除菌に対応しています。今後、新しい抗生物質が開発されていくでしょうし、私を含めて2名のピロリ菌感染症学会認定医と総勢11名の消化器内科スタッフが、高い専門知識と最新の情報を持って治療にあたりますので、何なりとご相談ください。

 

Q:ピロリ菌を完全に除菌できれば、胃がんは発症しないのですか?

久保:除菌により、胃がんの発生を約1/3に抑制できるとの臨床結果が発表されていますが、残念ながら、発生リスクが「ゼロ」になるわけではありません。
 ただし、成人が除菌した場合、定期的な経過観察が必要とはいえ再感染する率は極めて低いので、進行がんの発症が多くなる中高年層になる前に除菌しておくことをおすすめします。また、乳幼児期にご両親や祖父母、保育所の先生などから経口感染するリスクがありますので、赤ちゃんがいるご家庭は気を付けてください。

 

Q:内視鏡による早期発見・早期治療により、日本の胃がんは減るのでしょうか?

久保:かつて、がんは「死にいたる病」というイメージがありましたが、胃がんは早期発見できれば、「完治できる病」と捉えられるようになりました。ピロリ菌除菌が保険適用になったことで、胃がんは「感染症の一種」と捉えられ、「予防できる病」に変わっていくと思います。
治療の効果は10年、20年経ってみないとわかりませんが、後で振り返ってみれば、2013年は「ピロリ菌元年」もしくは「胃がん撲滅元年」と呼ばれるようなエポックになるのではないでしょうか。

 

 

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