労災疾病研究に関して

井上 信孝

 神戸労災病院の本部機構である労働者健康安全機構は、産業活動に伴い発生する疾病や、産業構造・職場環境等の変化に伴い社会問題化している健康問題に関して臨床研究を行っています。
平成26年度に、こうした労災疾病研究体制の見直しが行われ、より時代の要請に応じた内容に改変されました。
その結果、労災疾病研究は、1労災疾病等の原因と診断・治療(①腰痛、②運動器外傷機能再建)、2労働者の健康支援(③生活習慣病、④睡眠時無呼吸症候群、⑤作業関連疾患、⑥就労支援と性差、3労災保険給付に係る決定等の迅速・適正化(⑦外傷性高次脳機能障害、⑧じん肺、⑨アスベスト)に係る研究9分野へ集約されました。過労死の予防に焦点をあて研究を行ってきた脳、心臓疾患分野は、より発症予防に重きを置く「③生活習慣病」分野に引き継がれました。
 我々は、東北労災病院高血圧内科 宗像正徳先生、旭労災病院 木村玄次郎院長とともに、この「③生活習慣病」に関する研究を行っています。

 先日、その成果の一部を2015年10月2日〜3日のシンガポールで行われたSHBC2015で発表してきました。内容は、高血圧、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病を有する患者さんの職場でのストレスと、抑うつとの関連を検討したものです。学会では、シンガポールや他のアセアンの国々において、どのような課題が重要であるかに関して活発な意見交換が行われました。やはり感染症が、最重要な医療課題とのことでしたが、シンガポールでは、日本と同様に過労死が問題となっており、Karoshiという日本語が医療現場で抵抗なく使用されているとのことでした。

 今後、経済的な発展とともに、過労死問題は、共通した問題となっていくことを認識し、こうした問題に取り組むことも我々に課せられた責務であると感じました。

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